令和6年1月から、贈与税のしくみが変わりました。
変更内容は、大きく次の2項目です。
- 前3年加算が前7年加算へ
- 相続時精算課税に110万円の基礎控除
令和5年度の税制改正で、贈与税と相続税の制度が大きく変わりました。
これにより、相続税の節税対策も修正が必要になります。
修正後の節税対策を簡潔に言うと、
相続人は相続時精算課税を利用しましょう。
前3年加算が前7年加算へ
改正以前の制度では、被相続人の死亡日から遡って3年以内の贈与は、相続財産に加算されることになっていました。(相続税法第19条)
改正後は、7年以内の贈与になりました。
ここで、注意を要する点があります。
- 令和6年1月1日以後の贈与が対象
- 相続財産を相続や遺贈で取得した人
- 前4年以前の贈与は100万円控除
チョット分かりずらいため、個別に説明します。
【出典~国税庁パンフレット】
令和6年1月1日以後の贈与が対象
死亡日前7年以内の贈与財産を相続財産に加算するのは、令和6年からの贈与です。
例えば、
イ 令和6年5月30日死亡
➡ 令和3年5月30日以後の贈与を加算
ロ 令和10年5月30日死亡
➡ 令和6年1月1日以後の贈与を加算
ハ 令和13年5月30日死亡
➡ 令和6年5月30日以後の贈与を加算
つまり、「前7年以内」という改正は、令和5年以前に遡らないということです。
※納税者からみると、不利益は不遡及。
相続財産を相続や遺贈で取得した人
この点は改正されていません。
しかし、要チェックです。
被相続人からの贈与財産を加算するのは、次のA又はBのみです。
A 財産を相続する相続人
B 相続人以外で遺言で財産を取得する人
ここで、注意を要するのは、死亡保険金の受け取りです。
例えば、
養子でない孫が死亡保険金の受取人。
その場合、Bに該当して加算対象になります。
言い換えると、被相続人の養子となっていない相続人の配偶者・孫への贈与は、相続財産に加算しません。
したがって、これらの贈与は節税対策として効果的です。
前4年以前の贈与は100万円控除
これは新しい仕組みです。
被相続人の死亡日から3年以内より前の贈与は、100万円を引いた金額を相続財産に加算するということになります。
3年より前の贈与とは、令和9年1月2日以後の死亡からになります。
令和6年1月1日以後の相続で3年後の令和9年1月1日死亡では、3年より前がありません。令和9年1月2日死亡なら、令和6年1月1日の贈与が前3年より前になりますから、この日に贈与があれば、贈与金額から100万円を超える部分を加算することになります。
相続時精算課税に110万円基礎控除
改正前の相続時精算課税には、基礎控除がありませんでした。
110万円の基礎控除といえば、暦年課税の贈与だけでした。
この改正により、
相続時精算課税の2,500万円の特別控除に加えて、110万円の基礎控除ができることになりました。
しかも、
- 相続財産の加算は110万円控除後の金額
- 110万円以内の贈与なら申告不要(注)
相続時精算課税は、累計で2,500万円までの特別控除があります。
例えば、3年間で贈与を受けた場合であれば、累計2,500万円までの特別控除があるほか、毎年110万円の基礎控除も受けれます。
しかも、贈与が110万円以内の年は、贈与税の申告が不要になります。
(注)1年目の贈与が110万円以内で申告しないケースでは、「相続時精算課税選択届出書」を申告期限内(贈与の翌年3月15日が期限です)に提出することが必要です。
令和6年以後の節税対策
令和6年以後の相続税の節税対策では、以上の改正を踏まえて上手に贈与しましょう。
具体的には、
- 相続人への110万円以内の贈与は精算課税
- 相続人以外へは暦年課税を活用
例えば、
300万円、500万円という贈与で早期に財産を減らす場合なら、前7年加算になることも承知の上で暦年課税を選択することもあり得ます。(※)
しかし、110万円以内の贈与で確実に財産を減らすなら、相続時精算課税を選択しましょう。
なお、相続人以外への贈与も有効なため、積極的な検討が望ましいといえます。
※相続時精算課税の選択後は、暦年課税に戻れないのは改正後も同じです。
【合わせて読みたいブログ】
目次・相続税の節税対策に関するブログを検索しやすく、注意点も説明
まとめ
令和6年以後の贈与税をめぐる改正を踏まえて、相続税の節税対策を見直すことが必要です。
このブログでは、死亡日前7年以内の贈与加算について、具体的に取り上げました。
合わせて、相続時精算課税の改正も取り上げました。
少しでも、皆様の参考になれば幸いです。
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