このブログでは、分かりやすい説明に努めているつもりですが、税金関係の言葉や用語は聞き慣れないものが多くあります。
そこで、用語集(50音順)を作ってみました。
ご主人の理解の一助になれば幸いです。
【あ行】
空家特例の3,000万円の特別控除
1人暮らしの方が死亡し、相続した人がその空家を売却した際に、売却利益から3,000万円を控除するという特例です。
特例の主な条件は、以下のとおりです。
①相続、遺贈又は死因贈与で死亡した方の住まいの土地と家屋の両方を取得した人
②特例の対象となる家屋(住宅)は、次の項目「空家特例の家屋(住宅)とは」をご覧ください
③同様に、特例の対象となる土地(敷地)は、次の項目「空家特例の敷地等とは」をご覧ください
④譲渡の対価が1億円以下であること
⑤相続税額の一部を取得費(原価)に加算する特例を受けていないこと
⑥既にこの特別控除を受けていないこと
⑦死亡から3年目の年末までに譲渡すること
⑧買主は原則として他人であること
⑨確定申告書を提出して特別控除を受けること
空家特例の3,000万円の特別控除の適用期限は、令和5年の税制改正で4年延長され、令和9年年末までとなりました。
なお、相続人が3人以上の場合の特別控除額は現行は1人3,000万円ですが、令和6年1月以後の譲渡から1人2,000万円に引き下げられます。
※これは令和5年の税制改正です。
空家特例の家屋(住宅)とは
空家特例の対象となる家屋は、相続等により取得した次の全てに該当するものです。
①死亡した人が死亡直前に1人暮らししていた家屋(区分所有登記は非該当)であること
②死亡した人が要介護認定等を受け老人ホームに入居していた場合は、入居直前まで1人暮らししていた家屋で、住まなくなった後も死亡した人の物品を保管しており、事業、貸付けや居住の用に供しておらず、老人ホームが主たる居住用家屋であること
③昭和56年5月末以前に建築された家屋であること
④譲渡時の耐震基準に適合すること
⑤死亡から譲渡まで空家であること
⑥死亡後の増築、改築、修繕、模様替えは含まれます
家屋は④の耐震リフォームが必要です。
なお、現行は譲渡までに耐震リフォームが必要ですが、令和6年1月以後の譲渡では、譲渡の翌年2月15日までに行う場合も特例の対象になります。
※これは令和5年の税制改正です。
空家特例の敷地等とは
空家特例の対象となる敷地等は、相続等により取得した次の全てに該当するもの。
①死亡から譲渡まで、空家特例の家屋(住宅)の敷地等であること
②死亡から譲渡まで事業、貸付、居住の用に供されていたことがないこと
③家屋とともに譲渡すること
(注)空家の全部を取り壊した場合は、取り壊しから譲渡まで空地であること。
なお、現行は、譲渡までに空家の全部を取り壊した場合は特例の対象ですが、令和6年1月以後の譲渡では、譲渡の翌年2月15日までに取り壊した場合も特例の対象になります。
※これは令和5年の税制改正です。
家なき子
相続税の小規模宅地等の特例のうち特定居住用宅地等では、小規模宅地等を取得する人ごとに適用条件が異なります。
被相続人の配偶者及び同居の親族以外の親族が取得した場合には、次の4つの条件を満たす必要があります。
①配偶者及び同居していた親族がいないこと
②死亡前3年以内に日本国内にある取得者、取得者の配偶者等が所有する家屋に住んだことがないこと
③死亡時に取得者が住んでいる家屋を死亡前に所有していたことがないこと
④その宅地を死亡時から相続税の申告期限まで所有していること
上記の②と③の要件を満たす親族のことを、通称「家なき子」と呼んでいます。
遺贈
被相続人が遺言で財産を与えること。
なお、生命保険金(死亡保険金)や死亡退職金を相続人以外の人が受け取ると、遺贈による取得とみなされます。
一般障害者
身体障害者手帳に、障害の程度が3級から6級までであると記載されている者など。
【か行】
家族名義預金
被相続人の資金で被相続人以外の名義で預け入れられた預金は、名義を借りた借名預金と呼ばれます。
このうち、家族の名義のものは家族名義預金とも呼ばれます。
なお、名義人が預金の存在を知っている場合であっても、預金通帳や証書、キャッシュカード及び届出印鑑の全てを被相続人が管理しているケースでは、名義人は自由に払い戻しや解約ができませんので、被相続人の相続財産になります。
基礎控除
相続税の課税最低限のこと。
(計算式)
定額3,000万円+600万円×法定相続人の数。
法定相続人が1人で3,600万円、2人で4,200万円、3人で4,800万円。
法定相続人がいない場合でも3,000万円の基礎控除はあります。
基礎控除を計算する際の法定相続人には、死亡後3か月以内に相続放棄した相続人を含めます。
教育資金の一括贈与
父母や祖父母が、30歳未満の子供や孫の教育資金を一括で贈与した場合、最大1,500万円まで贈与税がかかりません(非課税)。
教育資金の内、学習塾の費用など学校等以外に支払う金銭は、500万円が非課税の限度です。
(注)子供や孫に多額の所得(※)がある場合は、非課税になりません。
※前年分の合計所得金額が1,000万円を超える場合。
この制度は、将来に渡る教育資金を一括で贈与するものです。
なお、入学金や授業料などの必要な金額を、必要な都度贈与するのも非課税です。
この制度は、相続税の節税対策としてその効果が期待できますが、使い残しに注意が必要です。
教育資金の一括贈与の非課税制度の適用期限は、令和5年の税制改正で3年延長され、令和8年3月末までとなりました。
◎贈与者が死亡した場合の相続税の課税
贈与者が死亡した場合で管理残額(※)がある場合には、贈与者からの相続又は遺贈とみなされて相続税の対象になります。
なお、子供や孫が23歳未満である場合等(※)に該当する場合は、課税対象になりません。
※管理残額とは、一括贈与された教育資金のうち教育費に充てられた残額。
※23歳未満である場合等とは、次の①から③の場合。
- 23歳未満である場合
- 学校等に在学している場合
- 教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合
(注)令和5年の税制改正
子供や孫が23歳未満である場合等であっても、贈与者に係る相続税の課税価格の合計額が5億円を超えるときは、相続税の課税対象になることとされました。
この改正は、令和5年4月1日以後の一括贈与から適用されます。
◎契約終了時の贈与税の課税
子供や孫が30歳に達した時点で管理残額があれば、贈与税の課税対象になります。
(注)令和5年の税制改正
契約終了時の贈与税の課税では、通常よりも軽減された税率(特例税率)が適用されていましたが、通常の税率(一般税率)が適用されることになりました。
この改正は、令和5年4月1日以後の一括贈与から適用されます。
居住用の3,000万円の特別控除
所有者自身が住んでいる自宅(居住用財産)を売却した場合には、売却利益から3,000万円を控除するという特例です。
特例の主な条件は、以下のとおりです。
①住まなくなってから3年目の年末までに売却すること
②建物を取り壊した場合には、取り壊しから1年以内の売却で、その間敷地を貸付けなどせずに、住まなくなってから3年目の年末までに売却すること
③買主が他人であること
④建物の一部が住まい以外である場合は、住まいの部分(床面積按分)が対象
⑤前年及び前々年に居住用の特例を受けていないこと
⑥確定申告書を提出して、特別控除を受けること
経費(譲渡費用)
資産の譲渡に際して支出した次のもの。
- 仲介手数料
- 測量費など土地や建物を売るために直接要した費用
- 貸家の売却に際して支払った立退料
- 建物を取り壊して土地を売ったときの取壊し費用と除却損(未償却残高)
- 売買契約書に貼付した収入印紙代 など
なお、修繕費、毎年の固定資産税、草刈り代金など、資産の維持管理に要した費用、引っ越し費用、抵当権抹消費用、税理士報酬などは譲渡費用にできません。
結婚子育て資金の一括贈与
父母や祖父母が、18歳以上50歳未満の子供や孫の結婚・出産・子育て資金を一括で贈与した場合、最大1,000万円まで贈与税がかかりません(非課税)。
その内、結婚資金は300万円が非課税の限度です。
(注)子供や孫に多額の所得(※)がある場合は、非課税になりません。
※前年分の合計所得金額が1,000万円を超える場合。
この制度は、相続税の節税対策としてその効果が期待できますが、使い残しに注意が必要です。
この制度は令和5年の税制改正で2年延長され、令和7年3月末までとなりました。
◎贈与者が死亡した場合の相続税の課税
贈与者が死亡した場合で管理残額(※)がある場合には、贈与者からの相続又は遺贈とみなされて相続税の対象になります。
※管理残額とは、一括贈与された資金のうち結婚子育て費に充てられた残額。
◎契約終了時の贈与税の課税
子供や孫が50歳に達した時点で管理残額があれば、贈与税の課税対象になります。
(注)令和5年の税制改正
契約終了時の贈与税の課税では、通常よりも軽減された税率(特例税率)が適用されていましたが、通常の税率(一般税率)が適用されることになりました。
この改正は、令和5年4月1日以後の一括贈与から適用されます。
原価(取得費)
譲渡所得の計算の際に、収入金額から控除する原価(取得費)とは、譲渡資産の買入金額及び登録免許税や仲介手数料等の付随費用の合計です。
また、相続、遺贈、贈与で取得した際に支払った登記費用、不動産取得税や名義書換手数料は、取得費になります。
建物などの減価償却資産は、譲渡までの期間に応じた償却額を買入金額から差し引きます。
実際の取得費が売却金額(収入金額)の5%(概算取得費)に満たない場合及び実際の取得費が不明の場合は、売却金額(収入金額)の5%とすることができます。
なお、相続した財産を相続から3年10か月以内に売却した場合には、相続税額の一部を取得費に加算できるという特例があります。
減価償却
譲渡所得は、売却金額(収入金額)から原価(取得費)と経費(譲渡費用)を差し引いて計算します。
この計算において、建物などの減価償却資産を売却した場合の原価(取得費)では、取得から譲渡までの期間に応じて減価償却します。
減価償却の計算は平成19年に改正されましたが、譲渡所得の場合は改正前の旧定額法で計算します。
(計算式)
建物の原価(取得価額)×0.9×償却率×経過年数
償却率は業務用資産の1.5倍の耐用年数の償却率。
経過年数は6か月以上は切り上げて1年に、6か月未満は切り捨てます。
限定承認
被相続人の債務がプラスの財産を上回ることが想定される場合に、プラスの財産の範囲で債務を承継すること。
手続きは、死亡から3か月以内に相続人全員が共同で家庭裁判所に対して申立てします。
なお、プラスの財産が土地や家屋など譲渡所得の対象となる資産である場合は、時価で譲渡したものとして譲渡所得を計算し課税されます。
これは、被相続人が所有していた期間中の値上がり利益を清算して、相続人等に引き継がせないためです。
譲渡所得に対する税金を被相続人の債務に含めることで、債務超過部分は切り捨てられます。
交換
2者による相対での交換が多く、所有する資産を相手方に渡して、相手方が所有する資産を受け取るもの。
等価交換が多いが、等価でないケースでは差金を授受する。
個人間の交換では、課税を繰り延べる交換の特例がある。
交換の特例
例えば、Aさんが所有する固定資産(販売目的でない資産)の土地と、Bさんが所有する固定資産の土地を交換した場合。
交換自体は譲渡の一種で、手放す土地の所有期間中の値上がり利益が譲渡所得となり、所得税や住民税の課税対象となります。
しかし、単に場所が変わっただけと考えられる交換では、いくつかの条件をクリアすることで、交換がなかったものとして税金の課税を繰り延べる特例。
交換の特例は、以下のすべての条件に該当するもの。
①固定資産と固定資産の交換であること
②土地と土地というように同種の資産であること
③交換譲渡資産は1年以上所有していたこと
④交換取得資産は相手方が1年以上所有していたもので、交換のために取得したものでないこと
⑤交換取得資産を交換譲渡資産の譲渡直前の用途と同一の用途に供すること
⑥交換資産の時価が等価であること又は差額が高い方の20%以内であること
⑦確定申告書を提出して交換の特例を受けること
香典
香典は被相続人の財産ではありません。
同時に、香典返しは葬式費用に含まれません。
ただし、北海道の葬儀の際の会葬お礼は、葬式費用に含めることができます。
※本来の香典返しとは、四十九日の法要後に、香典の半額をお返しするもの。
固定資産税評価額で評価(家屋)
相続財産や贈与財産が家屋である場合には、相続税や贈与税を計算するため、家屋の価値を評価して金銭に見積もる必要があります。
家屋の評価は、市町村が評価し定めている固定資産税評価額に1.0倍を乗じて算出します。
なお、貸家(アパート)の場合には、借家権を減額して0.7倍と評価します。
固定資産税評価額で評価(土地)
相続財産や贈与財産が土地である場合には、相続税や贈与税を計算するため、土地の価値を評価して金銭に見積もる必要があります。
土地の評価は、国税庁が毎年7月初めに公表している「評価基準」によって計算します。
具体的には、市街地の土地は「路線価」を基に計算します。
なお、路線価が定められていない地域の土地は、市町村が評価し定めている固定資産税評価額に、評価基準で定められた倍数を乗じて計算します。
【さ行】
財産分与
離婚に伴い財産の分与義務を負った者が、現金、預貯金や土地などの資産を相手方に渡すことで分与義務を履行するもの。
分与する財産が譲渡所得の対象となる資産のケースでは、消滅する財産分与義務が対価となる有償の譲渡になります。
譲渡所得の収入金額は、相手方に渡す資産の時価で計算します。
債務
被相続人の債務は、相続財産から控除します。
控除できる債務は、借入金のほか、病院代や固定資産税などの未払金で確実なものです。
したがって、保証債務は通常は控除できません。
失踪宣告
行方不明から7年経過して生死が明らかでないときなどでは、家族などの申立てに対して家庭裁判所が失踪宣告をします。
これにより、相続が開始します。
借名預金
被相続人の資金で被相続人以外の名義で預け入れられた預金は、名義を借りた借名預金と呼ばれます。
このうち、家族の名義のものは家族名義預金とも呼ばれます。
借名預金は被相続人の相続財産になります。
住宅取得等資金の非課税
父母や祖父母から18歳以上の子供や孫に対する金銭の贈与で、住宅の新築、取得、増改築に充てられた場合には、非課税限度額まで贈与税がかかりません(非課税)。
非課税限度額とは、耐震性能・省エネ性能・バリアフリー性能のいずれかを有する場合は1,000万円まで、それ以外の場合には500万円まで。
この非課税を受けた金額は、贈与者の相続財産に加算しません。
したがって、相続税の節税対策として検討したい特例です。
収用
土地収用法やその他の法律で収用権が認められている公共事業のため、土地建物を売った場合には収用などの課税の特例が受けられます。
課税の特例には次の2つがあります。
- 代替資産を取得した場合の課税の特例
- 5,000万円の特別控除の特例
これらの事業の公共性が高い場合には、買取を拒むと強制的に買い取られることになり、そのことを収用といいます。
なお、強制的な収用が背景にある場合の任意売買は一般の売買とは異なるものであり、5,000万円の特別控除の特例があります。
収用の5,000万円特別控除の条件
収用の5,000万円特別控除は、公共事業に協力したことに対する特典といえます。
条件としては、
①買取の申し出から6か月以内に買い取られていること
②同一事業が年をまたがって施行された場合は最初の年であること
③最初に買い取りの申し出を受けた者が買い取られていること(転売や贈与がされていないこと)
④確定申告書を提出して特別控除を受けること
なお、5,000万円控除を適用すると確定申告義務がなくなるケースでは、申告は条件ではありません。
障害者
障害者には、一般障害者と特別障害者があります。
所得税では所得控除、相続税では税額控除があります。
障害者控除
相続、遺贈(遺言)や相続時精算課税を適用した贈与によって財産を取得した人が、障害者で、かつ、相続人である場合には、85歳に達するまでの年数×10万円の金額を、障害者の相続税額から控除することができます。
特別障害者の場合には、85歳に達するまでの年数×20万円で計算します。
控除額の方が多い場合には、その超える金額を障害者の扶養義務者(配偶者、直系血族、兄弟姉妹)の相続税額から控除します。
小規模宅地等の特例
相続や遺贈によって取得した財産のうち、被相続人又は被相続人と生計を一にしていた親族の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等のうち、一定のものがある場合には、一定の面積までの部分(小規模宅地等)について一定の減額ができる特例。
例えば、居住用では、100坪(330㎡)まで80%減額できます。
事業用では400㎡までが80%減額、貸付け事業用では200㎡までが50%になります。
また、減額される面積には限度があります。
相続開始(死亡)後の相続税の節税策として、忘れずに受けたい特例です。
なお、この特例は、相続税の申告期限(10か月)までに取得して申告する必要があります。
※申告期限までに遺産分割が整わない(未分割)場合には、「3年内分割見込書」を添付することで、分割時に軽減されます。
譲渡
土地や建物、株式、ゴルフ会員権などの資産を移転させる一切の行為。
最も多い売買のほか、交換、収用、代物弁済、財産分与、寄付など、有償無償を問いませんが、相続は除かれます。
収入金額(譲渡価額)
売買等で収入することが確定した金額。したがって、未収金が含まれます。
また、未経過固定資産税相当額は収入金額に加算します。
なお、次の場合には時価が収入金額になります。
①相続のうち限定承認に係るものは相続時の時価
②法人への贈与、遺贈、低額譲渡はその時の時価
③交換は、交換取得資産の交換時の時価
譲渡所得
土地や建物、株式、ゴルフ会員権、土砂や砂利などの資産の譲渡による所得。
最も多い売買のほか、交換、収用、代物弁済、財産分与、寄付など資産を移転させる一切の行為が含まれますが、相続は除かれるます。
課税方式の違いで、土地や建物の場合の分離譲渡所得と、それ以外の総合譲渡所得に分かれます。
また、所有期間によって長期譲渡所得と短期譲渡所得に分かれ、税率が異なります。
譲渡所得の計算
収入金額ー原価ー経費ー特別控除=譲渡所得。
専門用語を使うと、譲渡価額ー取得費ー譲渡費用ー特別控除=譲渡所得。
生命保険金
被相続人が保険料負担者かつ被保険者の死亡保険金は、相続財産とみなされます。
この場合、受取人が相続人の場合は相続による取得とみなされ、相続人以外の場合には遺贈による取得とみなされます。
みなされる理由は、被相続人の相続財産ではないためです。
被相続人は、自身の死亡に基づく死亡保険金を受け取ることができないため、受取人の原始的な取得になります。
しかし、被相続人が保険料を負担していたケースでは、被相続人の他の財産、例えば預貯金や自宅などと経済的に同じであることから、法律(相続税法)で被相続人の財産とみなしています。
なお、生命保険金の課税関係には、保険料負担者、被保険者及び保険事故の種類により、贈与税になるケースと、一時所得になるケースがあります。
生命保険の権利
被相続人が保険料を負担していた生命保険で、被保険者が被相続人以外の場合には、死亡保険金は支払われません。
しかし、掛け捨て以外の保険の場合には、生命保険の権利が相続財産となります。
この場合、生命保険の権利の金額は、解約返戻金で計算します。
葬式費用
被相続人の葬式に際して相続人が負担した費用は、相続財産の金額から差し引きます。
具体的には、お寺などへの支払い、葬儀社やタクシー会社への支払い、お通夜・告別式の費用などです。
なお、墓地や墓碑など非課税財産の購入費用、香典返しの費用、初七日・四十九日の費用や繰り上げ法要の費用は、葬式費用に含まれません。
ただし、北海道の会葬お礼は香典返しとは性質が異なるため、葬式費用に含めることができます。
相次相続控除
今回の相続開始(死亡)前10年以内に、今回の被相続人が相続、遺贈(遺言)や相続時精算課税を適用した贈与によって財産を取得し相続税が課税されていた場合。
今回の被相続人に係る相続税から、その一部を控除します。
10年以内に2回以上の相続税がかかる場合に、その負担を軽減する制度です。
相続開始前3年
被相続人から相続財産を相続又は遺贈(遺言)によって取得した人に対するの贈与で、死亡日から遡って3年の間のものは、被相続人の相続財産に加算します。
ただし、次の贈与は加算しません。
- 贈与税の配偶者控除を適用・適用予定もの
- 住宅取得等資金の贈与
この制度は、相続直前の駆け込み贈与による相続税逃れを防止するものです。
(注)令和5年の税制改正
死亡日から遡って7年の間に改正されました。
この改正は、令和6年1月1日以後の贈与から適用されます。
なお、相続開始前3年超7年以内の贈与金額の加算では、100万円を控除します。
◎相続税の節税対策
相続開始前7年以内の贈与加算に延長されたことで、従来の節税対策が機能しないことが考えられます。
ここで要検討は、相続時精算課税の110万円の基礎控除の創設です。
この110万円の基礎控除部分は、相続時精算の対象外となるため節税になります。
相続開始日
被相続人が死亡した日。
なお、家庭裁判所の失踪宣告でも相続が開始します。
相続時精算課税
生前の贈与の際に、贈与税の納税を贈与者の死亡時まで先送りする制度。
60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子供や孫に対する贈与が対象で、2,500万円まで贈与税がかかりません。
2,500万円を超える場合には、超える金額に対して一律20%の贈与税がかかります。
相続時精算には、相続時に相続税で納める場合と納めた贈与税の還付を受ける場合の両方があります。
なお、贈与税の申告期限(翌年の3月15日)までにもらった人が贈与税の申告書を提出しないと、多額の贈与税がかかるので注意が必要です。
(令和4年3月末までの贈与では、受贈者の年齢が20歳以上となります)
(注)令和5年の税制改正
以下の改正があり、令和6年1月1日から適用されます。
- 相続時精算課税に新たに110万円の基礎控除
- 毎年110万円までの金額は、相続時に精算・加算しない
- 110万円以下の年は贈与税の申告不要(初年度は届出書のみ)
※②の110万円の基礎控除部分が相続時精算の対象外となるため、相続税の節税対策になります。
相続税の申告
被相続人から相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人の課税価格の合計額が、遺産に係る基礎控除額を超える場合、死亡から10か月以内に相続税の申告と納税が必要になります。
申告書の提出先は、被相続人の住所地を所轄する税務署になります。
相続人が2人以上いる場合は、連名で申告することができます。
相続人
被相続人の財産や債務を引き継ぐ人。民法では、相続人の範囲と順番が定められています。
第1順位:被相続人の子供。子供が先に死亡している場合はその子供(代襲相続人)。
第2順位:被相続人の父母又は祖父母。
第3順位:被相続人の兄弟姉妹。兄弟姉妹が先に死亡している場合は(甥・姪)が代襲。
※代襲は1度だけで甥姪の代襲はありません。
被相続人の配偶者は常に相続人になります。
相続放棄
被相続人の財産や債務を引き継がない方法。
例えば、被相続人に多額の債務があるケースでは、債務を承継しないための方策。
自己のために相続の開始があったことを知ってから3ヶ月以内に、家庭裁判所にて申し立てます(「相続放棄申述書」を提出)。
(注)相続人間の遺産分割協議で財産債務を引き継がない事実上の放棄とは異なります。
事実上の放棄では債権者に対抗できません。
贈与税
生前に無償で財産をあげることを贈与といいます。
贈与には贈与税という税金があり、もらった人が贈与税を払います。
贈与税には110万円の基礎控除があり、これを暦年課税と呼んでいます。
1年間に贈与を受けた金額が、もらった人(受贈者)の側で110万円までは無税です。
贈与税は相続税の補完税で、相続税法に規定されています。
※補完税:相続財産の減少を防止するため、相続税より高く設定されています。
贈与税の主な特例には、以下のものがあります。
- 配偶者控除
- 相続時精算課税
- 住宅取得等資金の非課税
- 教育資金の一括贈与の非課税
- 結婚子育て資金の一括贈与の非課税
贈与税額控除
相続開始前3年内の暦年課税分の贈与財産が相続財産に加算された場合で贈与税を納めているケースでは、相続税額から納めた贈与税額を控除します。
同様に、相続時精算課税の贈与に伴い贈与税を納めている場合にも、相続税額から贈与税額を控除します。
損益通算
所得税の計算においては、所得を10種類に分類して計算します。
この際、赤字の所得と黒字の所得を相殺することを損益通算といいます。
総合課税の譲渡所得は、給与などの総所得と損益通算できます。
土地建物の譲渡所得(分離課税)では、原則として損益通算ができません。
もっとも、所得内通算はできます。
所得内通算とは同一の所得内での相殺で、土地建物の譲渡所得(分離課税)の損失を、他の土地建物の譲渡利益と相殺するもの。
◎土地建物の譲渡所得(分離課税)の損益通算の例外
所有者が住まいを売却したケースで、2種類の特例では、損益通算はもちろん引ききれなかった損失を以後3年間繰り越して、他の所得と損益通算することができます。
これを繰越控除といいます。
居住用の2種類の特例とは
- 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
- 特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
【た行】
単純承認
被相続人のプラスの財産とマイナスの財産を、無条件で受け継ぐことです。
ポイントは、特別な手続きをする必要はなく、相続開始後3ヵ月以内に相続放棄と限定承認の手続きをとらなければ、自動的に単純承認をしたものとみなされます。
代物弁済
借入金の返済を土地などで行うこと。
代物弁済によって借入金などの債務が減少することから、有償譲渡になります。
短期譲渡所得(総合)
土地建物等以外の譲渡による所得のうち、取得から譲渡までの所有期間が5年以下の場合。
50万円の特別控除があります。
税率は給与や不動産などの所得と合計して、超過累進税率で計算します。
短期譲渡所得(分離)
土地建物等の譲渡による所得のうち、譲渡した年の1月1日で所有期間が5年以下の場合。
税率は所得税が30%+復興特別所得税、住民税が9%で、合計39.63%。
長期譲渡所得(総合)
土地建物等以外の譲渡による所得のうち、取得から譲渡までの所有期間が5年超の場合。
50万円の特別控除をした残額の1/2が所得になります。
税率は給与や不動産などの所得と合計して、超過累進税率で計算します。
短期譲渡所得(総合)もある場合の50万円の特別控除は、短期譲渡所得から先に控除します。
長期譲渡所得(分離)
土地建物等の譲渡による所得のうち、譲渡した年の1月1日で所有期間が5年超の場合。
税率は所得税が15%+復興特別所得税、住民税が5%で、合計20.315%。
低額譲渡
法人に対する譲渡のうち、対価の額が時価の1/2未満の場合には、時価で譲渡したものとみなされます。
特別控除
特別控除には9種類あります。
- 収用交換等 5,000万円
- 居住用財産 3,000万円
- 空家特例 3,000万円
- 特定土地区画整理事業等 2,000万円
- 特定住宅地造成事業等 1,500万円
- 特定の土地等 1,000万円
- 農地保有の合理化等 800万円
- 低未利用土地等 100万円
- 総合譲渡 50万円
特別障害者
身体障害者手帳に、障害の程度が1級又は2級であると記載されている者など。
【な行】
納税地(相続税)
納税地とは納税する場所ですが、相続税の申告書を提出する税務署が決まる大切なもの。
具体的には、亡くなった人(被相続人といいます)の死亡時の住所になります。
相続税法の規定は分かりづらいものです。
相続税法62条は、相続人の住所地が納税地と規定しています。
しかし、相続税法の条文の後に、附則(ふそく)第3項という規定があり、そこでは「・・・当分の間、・・・被相続人の死亡の時における住所地とする。・・・」と決められています。
この附則は、相続税法が制定された昭和25年からあるもので、いまでも有効です。
◎被相続人の住所地を納税地と定めた理由・必要性?
相続税は他の税金と異なり、被相続人の財産の総額で計算する仕組みになっています。
※相続税の総額を最初に計算し、その後に取得金額に応じた納税額を算出するという2段階の計算です。
このため、相続人がそれぞれの住所地で申告した場合、相続税の計算が正しいかどうかのチェックが難しい。
加えて、取りまとめをどこの税務署が行うかが決めずらい。
仮に、税務署が税務調査を実施することになった場合、どこの税務署が行うのかも決めずらい。
つまり、一義的には税務署側の都合がいいように、被相続人の死亡の時の住所地を納税地と定め、そこを管轄する税務署への申告・納税とした訳です。
納税地(贈与税)
贈与税の納税地は、もらった人(受贈者)の住所地です。
これは、相続税と同じで相続税法62条に規定されています。
なお、贈与税の納税地には附則が規定されていないことから、そのまま受贈者の住所地が納税地となります。
贈与税に関しては、贈与者よりも受贈者の住所を管轄する税務署が担当する方が何かと好都合だからです。
【は行】
配偶者控除(贈与税)
婚姻期間が20年以上の夫婦間の贈与で、もらった配偶者の住まい又は住まいを取得する資金の贈与の場合には、2,000万円(配偶者控除)を控除することができます。
同じ贈与者からの配偶者控除は、一生に1度だけです。
なお、配偶者控除を受けた贈与は、亡くなる直前であっても相続財産に加算しません。
このため、相続税の節税対策として有効です。
配偶者に対する相続税額の軽減
配偶者の内助の功に配慮した制度で、配偶者の生活保障の意味合いもあります。
相続開始(死亡)後の相続税の節税策として、忘れずに受けたい特例です。
配偶者が相続や遺贈によって取得した金額は、配偶者の法定相続分(最低保証1億6,000万円)まで、配偶者に相続税がかかりません。
なお、相続税の申告期限(10か月)までに取得して申告することが条件です。
※申告期限までに遺産分割が整わない(未分割)場合には、「3年内分割見込書」を添付することで、分割時に軽減されます。
非課税財産
相続や遺贈(遺言)によって取得しても、相続税の対象にならない財産。
言い換えると、課税対象となることに国民の納得が得られずらい財産です。
具体的には、墓地、墓碑、仏壇仏具、死亡保険金や死亡退職金の内それぞれ500万円×法定相続人の数までの金額、国、地方公共団体、特定の公益法人に対して寄付した財産など。
扶養義務者
配偶者、民法877条の直系血族及び兄弟姉妹、家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった3親等内の親族。
なお、未成年者控除及び障害者控除の金額が、未成年者及び障害者の相続税額を超える場合には、超える部分の金額を扶養義務者の相続税額から控除します。
分離譲渡所得
土地等や建物等の譲渡による所得は、給与所得や不動産所得などの他の所得と分離して、税額の計算をします。税率も別になります。
※土地等とは、土地のほか、土地の上に存する権利(借地権など)。
※建物等とは、建物のほか、建物付属設備と構築物。
なお、確定申告はその他の所得と同じ申告書になります。
法定相続人
民法の相続人のことですが、相続放棄をした人も人数にカウントします。
法定相続人になれるのは、配偶者と子供(孫などの代襲を含みます)、両親、兄弟姉妹(甥姪への1回だけの代襲を含みます)の血族です。
被相続人の配偶者は常に法定相続人になります。
【ま行】
未成年者控除
相続や遺贈(遺言)によって相続財産を取得した人が18歳未満の場合には、相続税額から未成年者控除を控除することができます。
未成年者控除は、成人に達するまでの年数×10万円です。
未成年者の相続税額より控除額の方が多い場合には、その超える金額を未成年者の扶養義務者(配偶者、直系血族、兄弟姉妹)の相続税額から控除します。
なお、令和4年3月末までに亡くなった場合には、20歳未満の人が対象になります。
【ら行】
路線価・路線価評価
相続財産や贈与財産が土地の場合には、税額計算のために金銭に見積もる必要があります。
このことを評価と呼びます。
市街地にある土地の評価では、国税庁が毎年7月初めに公表している「路線価」と呼ばれるものを利用します。
路線価は、道路(路線)に付した値段で、1㎡当たり千円単位になります。
土地の評価金額は、その土地が面している路線価×地籍で計算します。
なお、間口距離や奥行距離、角地加算などの微調整があります。
まとめ
このブログでは、専門用語や聞き慣れない言葉を使用していることがあると思います。
これらの言葉の意味が正確に伝わらないと、ブログの内容も正確には伝わらないことになります。
このため、用語集を作成しました。
参考になると嬉しいです。
なお、お困りのことがありましたら、お気軽に問い合わせてください。
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