平成27年からの相続税の増税以来、相続税の節税は注目を集めています。
そして、相続税の節税といっても色々ありますが、手軽で簡単なのが家族に110万円までの贈与です。
これを毎年繰り返すことで、大きな金額の節税になります。
このあたりのことは、既にブログに書きました。
手軽な節税策ですが、注意点や検討を要することがあります。
今回は、それを書いていきます。
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贈与で節税、注意点!
注意点は、次の6つです。
奥様の生活資金の確保
最優先されるべきは、奥様の生活です。
相続税の節税よりも優先されるべきです。
奥様にも毎年110万円の贈与をします。
しかし、奥様の生活費・老後資金はこれでは不足します。
ご主人より、奥様の方が長生きする可能性が高いです。
お孫さんへのお小遣いなども含めて、潤沢な資金を確保してあげましょう。
3年内の贈与加算!
贈与税は、相続税の補完税です。
死亡日から遡って、まるまる3年の間の贈与は、相続財産に加算されます。
このため、少しでも早くから贈与すること。
★具体的に3年間とは?
例えば、今日(令和4年1月24日)死亡した場合。
3年間は、平成31年1月25日~令和4年1月24日の間です。
この期間の贈与は、110万円以下の少額でも加算されます。
もっとも、加算されるのは、相続財産をもらった人だけです。
前回は、奥様を含めて5人に贈与するケースを説明しました。
10年間で5,500万円を贈与できます。
10年間×110万円×5人=5,500万円。
その内、相続財産をもらう相続人は、奥様と子供さん1人で合計2人。
※遺言や養子縁組が無い場合。
10年間で5,500万円の贈与のうち、加算対象は660万円です。
3年×2人×110万円=660万円。
ただし、3年前の年は、贈与する日付によって加算対象でないことがあります。
※3年間が平成31年1月25日~令和4年1月24日の場合。
平成31年1月1日~平成31年1月23日までの贈与は加算されません。
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★加算される贈与に贈与税が課税されたら?
例えば、110万円を超える贈与の場合。
2重課税になるため、課税された贈与税の税額を、相続税から控除します。
※相続税法19条(贈与税額控除)。
★暦年課税の廃止が注目されている?
令和2年12月の税制改正大綱で、贈与税の改正が取り上げられました。
ポイントは、
- 年間110万円まで無税とされる贈与税の暦年課税が廃止?
- 相続開始直前3年間の贈与加算期間を10年間又は一生涯に?
この改正は、具体的にいつからになるか今のところ不明です。
しかし、早ければ令和5年からかも?
そして、仮に、加算期間が10年間になった場合、過去に遡及して適用される可能性もゼロとは言えないのです。
なお、税制改正に係るブログを書きましたので、併せてご覧ください。
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贈与税の申告
※相続税法28条。
税務署に贈与を否認されると節税できません。
★借名預金・名義預金
例えば、5人に贈与した場合。
5人の名義の預金通帳に入金し、通帳と印鑑をご主人が手元で保管するケース。
加えて、5人は贈与を聞いていないとか、いつ贈与されたのか知らない場合。
これでは、贈与になっていません。
単なる借名預金・名義預金です(名前を借りたご主人の預金)。
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では、どうやって税務署に認めさせるのか?
前提は、贈与の都度5人に話して、実際にお金を渡すこと。
※未成年者は親(親権者)で大丈夫です。
その上で、
イ 贈与税の申告書を毎年税務署に提出
110万円までの贈与は、税金も「0」で申告義務がありませんが、あえて申告書を提出します。
これを、「ゼロ申告」といいます。
申告書の提出先は、5人のそれぞれの住所を管轄している税務署です。
もらった5人の名前で申告します。

ロ 111万円の贈与にする
ゼロ申告が心配ということで、あえて、贈与税を1,000円支払う人もいます。
111万円の贈与の場合、基礎控除110万円を引いた残り1万円に10%の贈与税がかかります。
10,000円×10%=1,000円。
※そこまでしなくても良いと思います。
ハ 金額を300万円にする人も
300万円の場合、110万円の基礎控除を引いて、残りの190万円の税率は10%。
19万円の贈与税を支払いますが、より多額に節税をしたい場合や、10年も長生きできるか心配なケースなど。
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ニ 毎年、贈与金額を変える
毎年110万円では、あらかじめ決まっている定期的な贈与「定期金」と認定される恐れがあります。
このため、毎年金額を変えて贈与する。
※「定期金」とは。
贈与は民法の契約の一種で、当事者が合意すれば成立します。
(民法549条)
例えば、
「毎年110万円を10年間あげます、もらいます」という贈与も有効です。
この場合、
「毎年110万円×10年間」が1つの贈与なので、110万円の基礎控除を超えて贈与税がかかります。
なお、贈与は「口頭」といって「口約束」でも有効です。
あえて、契約書を作成する必要があるかどうかは、検討の余地があります。
定期的な贈与契約書を作成すれば、定期金と認定される証拠を作成することになり、リスクが高くなるだけです。
子供や孫の勤労意欲?
例えば、現金を贈与するとします。
この場合、毎年毎年もらえると分かると、もらう側の気持ちが変化することが懸念されます。
特に、金額が大きくなると、地道に働いて生活の糧を得るという気持ちがなくなる?かも。
これでは、節税はできても幸せにはなれない?
ご自身の老後の資金?
余計なお世話だ!と言われそうですが?
ご主人の生活のことは優先されるべきです。
バランス・公平な贈与!
例えば、長男やその家族に、他の子供さんより多く贈与する。
これでは、兄弟紛争の元になります。
贈与や支援は、公平を心がけるべきです。
以上が注意点です。
いずれにしても、慎重な検討が必要です。
相続税のプロの税理士へ
相続税のことはその道のプロ、詳しい税理士に相談しましょう。
相続税はかなり特殊な税金です。
加えて、本当に詳しい税理士、いわゆるプロの税理士が実は少ないのが実際のところです。
税理士は、全国に約8万人もいます。
しかし、相続税に詳しい税理士はほんの一握りです。
予期せぬ税金がかからないように、相続税のプロの税理士にご相談ください。
このブログで取り上げた、家族に毎年贈与して相続税を節税することには、説明したように注意点があります。
したがって、プロの税理士に相談したり依頼することは、必須といえます。
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まとめ
このブログがきっかけで、節税できることを祈念いたします。
なお、お困りのことがありましたら、お気軽に問い合わせてください。
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