生命保険金を巡る悲しい事例がありました。
私は相続税が専門の税理士ですが、知人から聞いた実際にあったケースです。
それは、生命保険金を受取った奥様が3ヶ月以内に相続放棄(※)したため、生命保険金の非課税を受けられなくなったというものです。
ちょっとしたことですが、税金の金額が大きく異なりますので注意してほしいです。
転ばぬ先の杖、相続税のことは相続税に詳しいプロの税理士に相談しましょう。
※民法915条。
生命保険金の非課税が受けられなかった
【家族構成】
★事例
ご主人が亡くなられたために、奥様は、死亡保険金5,000万円を受取りました。
相続人は奥様と子供さん2人の合計3人です。
したがって、1,500万円の生命保険金の非課税(※1)を受けられるはずでした。
計算は、
500万円×法定相続人数=非課税(※2)
生命保険金を受取った奥様は、預貯金などの相続財産を子供たちに渡したい。
そもそも分割協議にも参加しないことを選択。
そして、潔く、3ヶ月以内に家庭裁判所で相続放棄の手続をしました。
この相続放棄によって、奥様は非課税が使えなくなりました。
時々あるのは遺産分割で財産を取得しないこと。
それは、家庭裁判所に届出る相続放棄ではなく、事実上の放棄と呼ばれるものです。
事例の奥様は、生前に、ご主人から自宅の贈与を受けていました。
この贈与については、贈与税の配偶者控除(※3)を受けています。
このため、自宅の心配はなく、5,000万円の生命保険金で十分だと考えて相続放棄した訳です。
※1 相続税法第12条第5号。
※2 相続税法第12条第5号イ。
※3 相続税法第19条の2。
生命保険金の非課税は相続人限定
生命保険金の非課税が受けられるのは、相続人に限られています。(※1)
事例の奥様は、相続人でした。
しかし、事実上の放棄ではなくて、正式に3ヶ月以内の相続放棄をしました。
この放棄により、奥様は最初から相続人でなかったことになりました。(※2)
この結果、1,500万円の生命保険金の非課税は受けられませんでした。
この事例の場合、相続税の基礎控除は4,800万円です。
そして、ご主人の相続財産は基礎控除よりも多くありました。
このため、想定外の相続税を払わざるを得なくなったのでした。
※1 相続税法第12条5号。
※2 民法939条。
まとめ
このブログでは、3ヶ月以内に相続放棄をしてしまったために、生命保険金の非課税を受けられなかったケースを取上げました。
税金の計算はもともと複雑ですが、相続税の規定は他の税金よりさらに難解なものです。
相続税の世界には、法定相続人と相続人の2つがあります。
生命保険金の非課税枠の計算では、法定相続人。
その非課税枠を使えるのは、相続人。
これにより、非課税枠の計算では、相続放棄した奥様も人数にカウントします。
しかし、奥様が受取った生命保険金では、非課税の規定が適用されないことになります。
相続税に詳しくない税理士には、この違いが分からない ?
ちょっとしたことで、思わぬ税金を払うことにならないようにご注意ください。
このため、相続税のことは相続税に詳しいプロの税理士に相談しましょう。
なお、お困りのことがございましたら、気軽に問い合わせてください。
★お問い合わせはこちらからお願いします。
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