相続税の節税対策の1つとして、奥様に自宅を贈与して贈与税の配偶者控除を適用するというものがあります。
なお、奥様に自宅を贈与するといっても、いくつかの方法があります。
このブログでは、個々のケースを取り上げて説明してきました。
しかし、贈与税の配偶者控除には、相続税の節税以外に新たな税負担が生じるなど、デメリットもあります。
このため、今回は、贈与税の配偶者控除を適用するメリットとデメリットを整理しました。
設例に基づく比較結果は次のとおりです。
相続税が節税できましたが、登記費用が割高になるほか、不動産取得税が新たに発生します。
なお、贈与後に自宅を売却することには、贈与税の配偶者控除が否認されるリスクが伴うため、慎重な検討が求められます。
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配偶者控除を適用するメリット
贈与税の配偶者控除を適用するメリットは、次の3つです。
- ご主人の相続税が節税できる
- 奥様の住まいを確保できる
- 自宅の売却で3,000万円控除(注)
(注)
自宅を売却して3,000万円の特別控除を適用することには、リスクが伴います。
例えば、奥様に自宅(家屋と敷地)の1/2を贈与して、贈与税の配偶者控除を適用します。
その後に自宅を売却した場合、家屋の所有者ごとに3,000万円の特別控除が受けられます。
このケースで、奥様の3,000万円控除は問題ないと考えられます。
なぜなら、3,000万円控除が受けられない次のようなケースではないからです。
- 3,000万円控除のみの目的で住んだ場合
- 一時的な住まい、仮住まい
- 別荘など
しかし、贈与税の配偶者控除の適用では、注意が必要です。
それは、贈与の翌年3月15日までに居住し、かつ、その後引き続き居住の用に供する見込みである場合(※)という条件があるからです。
あくまでも見込みではありますが、贈与の時点で自宅の売却が予定されているケースでは、後日、税務当局から 贈与税の配偶者控除を否認される危険性があるといえます。
2,000万円の配偶者控除を否認された場合の贈与税は、本税だけで695万円と莫大です。
さらに、加算税や延滞税も加算されます。
※相続税法21条の6
3,000万円控除と贈与税の配偶者控除には、居住期間という条件がありませんが、最低でも1年、できれば数年は居住したいです。
デメリット
贈与税の配偶者控除を受けることで発生する税金など。
- 自宅の登記に伴う登録免許税が5倍
- 不動産取得税
メリットとデメリットの比較
そもそも、贈与税の配偶者控除を検討するのはご主人に相続税の心配があるから。
このため、相続税の節税対策の1方策として、奥様に自宅を贈与します。
贈与税の配偶者控除を適用することで、相続税は節税できます。
しかし、新たな税負担が発生するなどのデメリットもあることから、それらを踏まえて総合的に検討していきます。
なお、具体的な検討のために、①家族構成と②ご主人の財産内容を設定します。
①家族構成
ご主人の家族構成は、以下のとおりだったとします。
例えば、ご主人に万が一の際の相続人は、奥様を含めて3人となります。
②ご主人の財産内容
ご主人の財産は、次のとおり総額2億1,000万円だったとします。
- 家屋 固定資産税評価額 2,000万円
- 敷地 固定資産税評価額 3,000万円
- 現金・預貯金 1億円
- 有価証券 5,000万円
(注)敷地は200㎡、路線価で4,000万円。
相続税(概算)
相続人が3人で、基礎控除は4,800万円。
配偶者の相続税額の軽減は、配偶者の法定相続分又は1憶6,000万円です。
★贈与税の配偶者控除を受けないケース
小規模宅地等の特例を適用することで、課税対象が▲3,200万円減額できます。
これで、相続財産の総額は1憶7,800万円になります。
遺産分割の結果、奥様が限度額の1憶6,000万円まで相続すると、奥様には相続税がかかりません。
その場合、子供さん2人が納める相続税額は、合計217万円です。
★自宅(家屋)を奥様に贈与して贈与税の配偶者控除を受けた場合
自宅(家屋)の全額2,000万円が減少します。
すると、相続財産の総額は1憶5,800万円。
この金額は、配偶者の相続税額の軽減の最低額1憶6,000万円を下回ります。
このため、仮に、全財産を奥様が相続した場合には、相続税は発生しません。
※小規模宅地等の特例は自宅の敷地に対するものなので、奥様に贈与する自宅は家屋にしましょう。
登記費用
登記は、個人・素人でもできます。
しかし、あえて専門家である司法書士に登記を依頼した場合で考えてみます。
登記費用を分解すると、登録免許税(国税)と司法書士の手数料。
登録免許税は、相続の場合と贈与の場合では金額・税率が異なります。
★相続登記の場合
登録免許税は固定資産税評価額の0.4%。
家屋;2,000万円×0.4%=8万円
敷地;3,000万円×0.4%=12万円
司法書士の手数料は、決められた基準はありませんが、1件当たり約10万円と試算します。
10万円×2件=20万円
以上の結果、登記費用の合計は、40万円。
★贈与登記の場合
登録免許税は固定資産税評価額の2%で、相続の場合の5倍です。
家屋の贈与で、2,000万円×2%=40万円
敷地は相続登記で12万円
司法書士の手数料は同額を見積り20万円
結果、登記費用の合計は、72万円。
不動産取得税
相続の場合、不動産取得税(都道府県税)は非課税です。
したがって、家屋の贈与に対する不動産取得税のみ。
固定資産税評価額の3%(原則)で、60万円。
(2,000万円×3%=60万円)
相続税のプロの税理士へ
相続税のことはその道のプロ、相続税に詳しい税理士に相談しましょう。
相続税はかなり特殊な税金といえます。
加えて、本当に詳しい税理士いわゆるプロの税理士が、実は少ないというのが現状です。
税理士は、全国に約8万人もいます。
しかし、相続税に詳しい税理士はほんの一握りです。
相続税に詳しい税理士は、贈与税にも精通しています。
予期せぬ税金がかからないように、相続税のプロの税理士にご相談ください。
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まとめ
ご存知のこととは思いますが、相続税はかからない方もいます。
また、配偶者の相続税額の軽減という特例を受けることで、相続税が発生しないこともあります。
これらの場合では、贈与税の配偶者控除を適用する必要がありません。
設例のように相続税が見込まれる場合、奥様に自宅を贈与して相続税を節税する。
それに伴い、新たな税負担が生じるというデメリットをまとめてみました。
なお、相続税の節税対策では、配偶者の相続税(2次相続)の検討は重要です。
それは、将来配偶者が亡くなった際には配偶者がいないこと。
加えて、相続人が一人減ります。
つまり、1億6,000万円のままだと高額な相続税が予想されます。
なお、お困りのことがありましたら、気軽に問い合わせてください。
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