家族信託とは、家族に財産の管理や処分を任せること。
なぜ家族に信託するかというと、将来の認知症の発症に備えるためです。
認知症になると、判断能力がなくなり財産の管理や契約の締結などができなくなります。
このブログで取り上げている相続税の節税対策では、家族に生前贈与したり、銀行ローンでアパートを建てたり、仏具などの非課税財産を買入れたりします。
しかし、認知症になってしまうと、このような節税対策という法律行為ができなくなります。
もちろん、全員が認知症になるわけではありません。
しかし、認知症になった場合の備えとして家族に信託するのです。
事例として、家族信託で自宅を長男名義にした後で、それまで住んでいた自宅を売却するとどうなるか。
- 居住用の3,000万円控除が使える?
- 信託時に長男に贈与税がかかる?
- 成年後見との違いは?
これらの疑問に答えていきます。
居住用の3,000万円控除は?
条件はありますが、居住用の3,000万円控除を受けられます。
では、どんな条件でしょうか?
- 自宅の所有者として住んでいること
- 住まなくなってから3年年末までの売却
- 3年に一度
- 買主が他人であること
- 翌年の確定申告をすること
家族信託で気になる点は、①の自宅の所有者として住んでいることに該当するかどうかです。
なぜなら、家族信託では、例えば長男(受託者)に名義変更するからです。
【家族信託の概要】
委託者 ➡ ご主人・財産を委託する人
受託者 ➡ 長男・財産を管理・処分する人
受益者 ➡ ご主人・財産の収益・費用の帰属
ご主人が、自宅の名義を長男に変更する。
ポイントは、ご主人が受益者であることです。
例えば、自宅を売却した際の収入が、ご主人に帰属することです。
財産の名義が長男になっても、売却に係る収益・売却代金がご主人に帰属すること。
なお、売却に際しての仲介手数料などの費用も、ご主人に帰属します。
つまり、自宅売却に係る譲渡所得は、ご主人(受益者)に帰属するから、確定申告もご主人の譲渡所得になるのです。
譲渡所得は、原価(取得費)や必要経費(譲渡費用)を差し引いて計算しますが、これらもご主人に帰属することになります。
【併せて読みたいブログ】
贈与税はかからない
ご主人が委託者=受益者で、自宅を長男に信託した場合、贈与税はかかりません。
もっとも、受益者がご主人以外のケースでは、受益者に贈与税がかかります。
(根拠)
相続税法第9条の2第1項
信託の効力が生じた場合において、適正な対価を負担せずに当該信託の受益者等となる者があるときは、当該信託の効力が生じた時において、当該信託の受益者等となる者は、当該信託に関する権利を当該信託の委託者から贈与により取得したものとみなす。
(注) カッコ書きは省略しました。
成年後見人との違い?
成年後見人は、家庭裁判所の選任で決まります。
成年後見人は、財産の管理を行いますが、基本的には財産を減らしません。
例えば、自宅の建て替えは、改めて家庭裁判所の審判がないとできません。
つまり、財産を減らす相続税の節税には不向きです。
なお、成年後見人には多額の費用が掛かります。
まとめ
このブログが少しでも参考になれば幸いです。
なお、お困りのことがありましたら、お気軽に問い合わせてください。
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