譲渡所得の計算方法は以前にも書きました。
今回は、プロ(税理士)でも見落としがちな点を説明します。
中には、税務署から指摘されたら反論できない重大なポイントも。
以前のブログはこちらからご覧ください。
【併せて読みたいブログ】
譲渡所得の収入金額とは?売買以外のあらゆるケース・計算基礎その1
譲渡所得の原価(取得費)とは?その範囲や5%まで・計算基礎その2
譲渡所得の必要経費(譲渡費用)?その範囲を詳しく・計算基礎その3
収入(譲渡価額)で注意すべき点
収入で取り上げるのは2点。
- 固定資産税相当額は収入に加算
- 時価より安くない?
固定資産税相当額は収入に加算
土地建物の売買で、固定資産税の日割り清算は今や常識です。
しかし、売主が受取る固定資産税は、税金ではありません。
固定資産税の納税義務者は、1月1日の所有者。
年の中途で取得した買主は、納税義務者にはなり得ません。
したがって、売主が買主から受け取るものは、「固定資産税相当額」なので、譲渡所得の収入金額になります。
忘れずに、収入金額に加算しましょう。
時価より安くないか?
時々問題になり税務署から指摘されるのは、時価より安いこと。
「いくらで売ろうと勝手だ!」と言われそうですが、そんなに単純ではありません。
買主が法人なら、みなし譲渡という規定(所得税法59条1項)があります。
会社に対して、時価の1/2未満で譲渡すると、譲渡所得は時価で計算することになります。
また、買主が子供なら時価より安い部分は贈与になり、110万円以上なら贈与税がかかります。
さらに問題なのは、本当は時価やそれに近い金額の譲渡であるにも関わらずに、安い金額で嘘の売買契約書を作成すること。
これは、譲渡所得に対する税金を安くする意図で行われるものですが、ばれたら重加算税が課税されます。
誰しも税金を安くしたいですが、絶対にやってはいけません。
原価(取得費)で注意すべき点
原価で注意すべきは取得時の特例です。
譲渡所得には、課税の繰り延べと呼ばれる特例があります。
この特例を適用すると、譲渡資産の原価が買換え資産に引き継がれます。
これにより、譲渡所得の課税が買換え資産の譲渡時まで繰り延べられます。
注意点は、買換え資産を譲渡するとき。
買換え資産の実際の買入金額を原価とすると誤りです。
もしも、この誤りを税務署の調査官から指摘されたら、もちろん反論できません。
なぜなら、それを承知で買入時に特例を適用しているのですから。
実際の買入金額と引継ぎ金額には相当な開きがあります。
つまり、指摘されて追加で支払う税額は、かなり高額になります。
したがって、譲渡資産の原価を確認する際には、課税の繰り延べを適用して買入ていないかどうかを確認することが重要です。
なお、課税の繰り延べ特例には、以下のものがあります。
- 固定資産の交換
- 収用代替
- 交換処分等
- 換地処分等
- 特定の居住用財産の買換え
- 〃 交換
- 特定の事業用資産の買換え
- 〃 交換
- いわゆる立体交換・買換え
- 特定の交換分合
- 特定普通財産との交換
経費(譲渡費用)で注意すべき点
土地建物の譲渡で時々ある事例。
それは、建物を取壊して土地を譲渡するケース。
建物を取壊す理由は、次のようなもの。
- 土地だけの方が売れやすい
- 放火などのリスクを回避したい
譲渡所得の計算では、土地を譲渡するために建物を取壊した場合、取壊し費用が経費(譲渡費用)になります。
ここで見落としがちは、建物の除却損失も譲渡費用にできること。
除却損とは建物の取壊し時点の未償却残高のことですが、建物は譲渡していないので原価(取得費)に算入できません。
しかし、除却損という経費(譲渡費用)になります。
法人税の世界では当たり前のようですが、個人の譲渡所得で経費計上できることを知らない税理士も意外と多い?
まとめ
今回は、譲渡所得の見落としがちなポイントを取り上げました。
譲渡所得は他の所得と比較して、高額になるケースが多いです。
したがって、計算誤りの影響も多額になりますので、細心の注意が必要です。
このブログが、少しでも参考になれば幸いです。
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