譲渡所得には、総合課税と分離課税があります。
課税方法の違いだけでなくて、計算方法や税率も異なります。
このブログでは、分かりやすい説明に努めています。
総合課税と分離課税
譲渡する資産の種類によって、総合課税と分離課税に分かれます。
総合課税の対象資産は、土地や建物など分離課税の対象とされる資産、以外の資産です。
例えば、機械装置、船舶、車両、著作権、ゴルフ会員権、土砂、砂利、書画骨董、金地金などです。
そして、分離課税の対象資産は、次のものです。
- 土地
- 借地権など土地の上に存する権利
- 建物
- 建物付属設備
- 構築物
※株式の譲渡所得も分離課税になりますが、ここでは説明を省略します。
総合課税の計算方法
総合課税とは、給与所得、不動産所得や雑所得などと合算して計算するということです。
⑴まず初めに、譲渡所得を計算します。

この計算式が意味するものは、譲渡・売却によっていくらの利益があるかということです。
利益がなければ、課税されません。
さらに、損失のケースでは、不動産所得や給与所得などの他の所得と相殺できます。
※このことを「損益通算」と呼んでいます。
⑵長期と短期に区分します。
長期と短期の区分は、所有期間によります。
取得してから譲渡までの期間が、5年超なら長期、5年以下なら短期になります。
長期譲渡所得では、特別控除50万円を差し引いた残りの金額の1/2が所得になります。
短期譲渡所得では、50万円控除までは同じですが、残りの金額を1/2しません。
⑶譲渡所得以外の他の所得と合算します。
他の所得とは、次のものです。
- 事業所得
- 不動産所得
- 利子所得
- 配当所得
- 給与所得
- 雑所得
- 一時所得
⑷課税される所得金額を計算します。
合算した所得金額の合計から所得控除を差し引いて、課税される所得金額を算出します。
所得控除には、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除、生命保険料控除などがあります。
⑸所得税額の計算
課税される所得金額に税率をかければ、所得税の税額が計算されます。
所得税の税率は累進税率という階段状の構造になっています。
所得金額が大きくなると、税率も高くなります。
なお、算出された所得税には、2.1%の復興税が加算されます。
分離課税の計算方法
分離課税とは、給与所得や不動産所得などと区分して、税額を計算することを意味します。
しかし、確定申告書自体は同じものを使用します。
つまり、税額の計算だけが別計算ということです。
⑴初めに、譲渡所得を計算します。

この計算式は、総合譲渡所得と同じです。
譲渡所得の計算では、総合課税と同じでいくらの利益があるかを計算します。
利益がなければ、課税されません。
なお、損失のケースでは、総合課税と異なり、不動産所得や給与所得などの他の所得と相殺できません。
他の所得との相殺を「損益通算」と言いますが、これができません。(注)
しかし、分離課税の譲渡所得が2つ以上あって、片方が利益、他方が損失というケースでは、相殺できます。
これは、同じ所得の中なので、損益通算と区別して「所得内通算」と呼んでいます。
分離課税同士なら、短期と長期でも相殺できます。
(注)損益通算ができる特例
長期譲渡所得の中には、例外的に次の2つのケースだけ損益通算ができます。
住んでいた自宅を売って損が出たケース2パターンのみ。
- 居住用財産の買換え等の譲渡損失の損益通算・繰越控除
- 特定居住用財産の譲渡損失損益通算・繰越控除
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譲渡の損失は給与などから引けませんが、居住用なら引ける特例が2つ
⑵長期と短期に区分します。
総合譲渡なら「取得してから譲渡までの期間」ですが、分離課税では、譲渡の年の1月1日で所有期間を判定します。
譲渡の年の1月1日で、所有期間が5年超なら長期。
5年以下なら短期です。
ここの表現「1月1日で所有期間が5年超」はチョット分かりずらい表現です。
(具体的に説明します)
~令和5年6月30日に土地を売ったケース~
取得が、平成29年12月31日以前の場合が長期になります。
同様に、平成30年1月1日以後の場合は短期です。
※取得が平成29年12月31日なら、5年後は令和4年12月31日です。
5年超とは5年と1日以上ですから、令和5年1月1日で5年超ということになります。
長期と短期では、税率が大きく異なりますので、この判定は重要です。
長期の税率は、所得税15.315%+住民税5%=20.315%
短期は長期の倍、所得税30.63%+住民税9%=39.63%
⑶譲渡所得から基礎控除などの所得控除を差し引きます。
ただし、所得控除額は総合課税の所得金額から先に引きますので、分離課税譲渡所得から差し引けるのは、総合課税の所得金額の控除残りになります。
先に総合課税の所得から差し引いて、残りがあれば控除できます。
⑷所得税額の計算
譲渡所得の金額から所得控除を差し引くと、課税される所得金額になります。
控除できる所得控除がない場合は、譲渡所得の金額のままです。
課税される所得金額に対して、長期と短期のそれぞれの税率をかけると、譲渡所得に対する所得税や住民税になります。
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譲渡所得に詳しい税理士へ
譲渡所得は毎年あるものではないため、馴染みが少ないものです。
土地や建物を売却したら分離課税になると言われると、「確定申告書が別」と思われる方が多いことからも、馴染みの少なさが分かります。
総合課税と分離課税、その計算に長期と短期があり税率も異なる。
ここはやはり、詳しい税理士に相談することが正しい申告の近道だと思います。
まとめ
このブログでは、譲渡所得の計算方法を取り上げました。
譲渡所得には、総合課税と分離課税があります。
譲渡所得の金額の計算式はほぼ同じですが、特別控除から税額計算までの部分は、全く異なります。
このブログが、少しでもお役にたてたなら嬉しいです。
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