奥様の内助の功に対する感謝の気持ちと、ご主人の相続税を節税する一石二鳥。
それが奥様に銀行ローン付きで自宅を贈与すること。
奥様の贈与税は配偶者控除を受けて無税にできます。
さらに、配偶者控除の金額分だけご主人の財産を減らせます。
説例に基づいて具体的に説明します。
銀行のローンの残高を引継ぐ自宅の贈与は、専門的には負担付贈与といいます。
この節税策では、
- 奥様に収入があること
- 小規模宅地等の特例への影響
- ご主人に譲渡所得が発生すること
などの注意点や検討要素があるため、相続税や贈与税に詳しい税理士に相談することが重要になります。
奥様に負担付贈与で一石二鳥
奥様に、銀行ローン付きで自宅を贈与します。
奥様の贈与税は、2,000万円までの配偶者控除を使います。
◎設例
- 自宅(家屋)の時価 2,000万円
- 自宅(敷地)の時価 2,000万円
- 自宅の家屋と敷地を奥様へ贈与
- ご主人のローン残高 2,000万円
- 奥様には収入がありローンを引継ぐ
以上の設例に基づいて説明していきます。
贈与税の配偶者控除
奥様に対する自宅の贈与は、贈与税の対象になります。
事例の場合の贈与金額は、自宅の時価からローン残高を差し引いた2,000万円。
(計算式)
4,000万円ー2,000万円=2,000万円
この贈与に対して、贈与税の配偶者控除を適用します。
配偶者控除の要件をクリアできれば、控除額は2,000万円なので奥様に贈与税はかかりません。
※相続税法21条の6(贈与税の配偶者控除)
★ 贈与税の配偶者控除の要件(条件)
- 婚姻期間が20年以上の夫婦間
- 奥様の居住用の自宅の贈与
- 翌年3月15日までに住み、住み続ける
- 翌年3月15日までに申告
- 同一の配偶者からは1回だけ
銀行ローンなどの負担が付かない贈与が一般的で、負担付贈与のケースは多くありません。
しかし、土地や建物の贈与であることは同じ。
両者は、贈与金額の計算方法が違います。
◎負担が無い贈与の場合
土地は路線価や固定資産税評価額に倍率を乗じて計算します。
建物は、固定資産税評価額の1.0倍です。
◎負担付贈与の場合
土地や建物の時価から負担額を差引いて計算します。
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相続税の節税
ご主人の相続税の節税という観点から説明します。
ご自宅の贈与で、ご主人の財産は4,000万円が減額されます。
同時に、債務2,000万円も無くなります。
差引きは、▲2,000万円。
ご主人の相続税が節税できる仕組みは、2,000万円の配偶者控除を受ける贈与金額が、相続財産に加算されないことです。
※節税のポイント
配偶者控除を受けた贈与財産(専門的には「特定贈与財産」といいます)は、前3年内の贈与加算対象から除外されていることです。
※相続税法19条2項(相続開始前三年以内に贈与があつた場合の相続税額)
★小規模宅地等の特例
この特例は、敷地(宅地)に対する特例で、自宅の場合には330㎡までの80%が減額されます。
設例では、自宅は奥様に贈与済みなので、小規模宅地等の特例は受けられません。
評価額で▲80%はかなりの金額になります。
小規模宅地等の特例には、自宅(居住用)の他に、事業用、同族会社事業用、貸付事業用があります。
自宅の敷地では使えませんが、ご主人の他の宅地等で、事業用、同族会社事業用、貸付事業用があれば、小規模宅地等の特例は使えます。
贈与税の配偶者控除と小規模宅地等の特例のトータルで、節税効果がどの程度なのかは簡単ではありません。
しかし、相続税で当面▲2,000万円の節税効果があると考えることはできそうです。
なお、小規模宅地等の特例を考慮して、奥様に家屋だけを贈与することは可能なため、検討の余地があります。
※租税特別措置法69条の4(小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例)
ご主人の譲渡所得
この負担付の贈与では、ご主人が負担額(ローン残高)で自宅を奥様に譲渡(贈与)したことになります。
そして、ご主人に譲渡所得の課税関係が発生します。
一概には言えませんが、課税対象の所得金額は、多くの場合発生しないと見込まれます。
(計算式)
負担額2,000万円ー自宅の取得費=0又はマイナスが見込まれます。
自宅の取得費の計算で、建物の取得費は経過年数による償却をします。
(注)損益通算はできません。
譲渡所得がマイナスになっても、ご主人の給与などの他の所得と相殺できません。
逆に、譲渡所得が発生(プラス)しても、居住用の3,000万円控除は使えません。
それらの理由は、奥様に対する譲渡だからです。
相続税のプロの税理士へ
相続税のことはその道のプロ、詳しい税理士に相談しましょう。
相続税はかなり特殊な税金といえます。
加えて、本当に詳しい税理士、いわゆるプロの税理士が実は少ないこと。
税理士は、全国に約8万人もいます。
しかし、相続税に詳しい税理士はほんの一握りです。
相続税に詳しい税理士は、通常は贈与税も詳しいです。
予期せぬ税金がかからないように、プロの税理士にご相談ください。
このブログで取り上げた贈与税の配偶者控除は、節税効果が大きいです。
反面、適用ミスの影響・納税額も、大きくなります。
したがって、相続税や贈与税に詳しい税理士に依頼することをお勧めします。
相続税のプロの税理士に関するブログもあります、参考になると嬉しいです。
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まとめ
このブログがきっかけで、節税できることを祈念いたします。
なお、お困りのことがありましたら、お気軽に問い合わせてください。
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