ご主人も、ご自身の死亡後は、家族には仲良くして欲しいと。
少なくとも相続を巡って家族が争う、いわゆる骨肉の争いだけは避けたい。
そんな争族に関する新聞報道などをご覧になった際には、強くそのことを思われたことでしょう。
このブログは、そんなネガティブな情報の発信ではありません。
むしろその逆です。
ご主人とご家族の幸せを応援したい。
そしてそれこそが、遺言の勧めです。
もちろん、家族会議などを通して、ご主人の考え方や思いを伝えることも重要です。
ご主人がお元気なうち、よく言われる「目の黒いうち」は家族円満だったとしても、相続財産の分割がスムースに終了する保証はありません。
この言葉もお聞きになったことがあると思いますが、「兄弟は他人のはじまり」。
これは、どんなに仲が良い兄弟でも、成長とともに不仲になることがあり得ます。
その原因の多くは、兄弟の結婚に伴い「他人」が加わることが関係します。
人は誰でも、自分の家族が大切なので、利害が相反する場面では、兄弟よりも、身近で普段生活を共にする配偶者や子供が大切なのは、ある意味自然なことです。
さらには、お金や財産は、いくらあっても邪魔にはなりません。
それでは、遺言がなぜお勧めなのか?
遺言で争族を回避する
遺言はご主人の意思です。
ご主人の財産ですから、相続やその処分の仕方をご主人が決めるのは、むしろ当たり前で尊重されます。
そして、遺言で指定された財産相続は、分割協議を必要としません。
これにより、「お父さんの意思だから」と、相続人間で納得が得られることも。
★ 家族構成
ご主人の家族構成が、ご夫婦と子供さん2人だったケースを例に説明します。
この場合、ご主人に万が一の時、相続人は奥様と子供さん2人になります。
どう見ても家族円満な理想的なご家族。
ご主人の財産を引き継ぐ相続人3人には、民法上の相続割合・法定相続分があります(民法900条)。
この家族構成では、それぞれの法定相続分は次のようになります。
- 奥様(配偶者)1/2
- 子供さんはそれぞれ1/4(1/2×1/2)
相続人3人は、話し合いで相続の仕方・取得する財産を決定します。
※この話し合いを、遺産分割協議といいます。
この協議の合意で、各人の相続財産が決まります。
そして、その内容・割合は、法定相続分と異なっても問題ありません。
分割協議が不調な場合
3人による分割協議で合意できないとき。
分割協議では、必ず合意できるとは限りません。
- 法定相続分よりも多く相続したい人
- 奥様との同居で自宅を相続したい子供
- 自宅以外に目ぼしい財産がない場合
- お孫さんの教育費を何とかしたい子供
- など
たった3人の相続でも、それぞれの思いがかみ合わずに、話し合いがまとまらないことがあります。
そんな時には、家庭裁判所での調停や裁判に発展することもあり得ます。
遺留分の侵害と主張
法定相続分とは別に、兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分(いりゅうぶん)という最低保証の相続分があります。
遺留分は、相続人の構成によって割合が異なります(民法1042条)。
⑴ 父母のみの場合は、父が1/3、母が1/3。
⑵ それ以外は、法定相続分の1/2。
具体的な遺留分は、次のとおりです。
- 配偶者と子供1人・・1/4(1/2×1/2)
- 配偶者のみ・・・・・1/2
- 子供1人のみ・・・・1/2
- 配偶者と父母・・・・配偶者1/3、父母各1/6
- 父と母のみ・・・・・各1/3
- 配偶者と兄弟・・・・配偶者3/8、兄弟は無し
兄弟姉妹以外の相続人は、取得する財産が遺留分に満たないときは、満たない金額の請求ができます。
※専門的には、遺留分侵害額請求といいます(民法1046条)。
例えば、相続人が配偶者と子供さん2人のケースで、遺言で全財産を配偶者に遺贈した場合には、相続できなかった子供さん2人は、それぞれ1/8の遺留分を主張し、侵害額の請求ができます。
※遺贈(いぞう)とは、遺言で相続財産を与えること。
逆に言うと、遺留分を侵害しない遺言は、そのままにできることになります。
子供さんの遺留分、1/8×2人分=1/4を残して、3/4を配偶者に遺言で与える。
あるいは、子供2人にそれぞれ1/8、配偶者に3/4を遺言する。
この場合、2人の子供さんに不満があったとしても、法的にはそれ以上の権利を主張できません。
したがって、円満な相続ではないにしろ、少なくとも裁判は回避できることでしょう。
遺言のメリット
遺言には、説明してきた争族の回避以外にも、メリットがあります。
- 遺産分割が不要で名義変更がスムース
- 子供がいない場合は配偶者に全額遺贈
- 相続させたい人に多く遺贈できる
- 再婚で前妻と後妻の子供に円滑な遺贈
- 内縁の配偶者に遺贈できる
- 推定相続人を廃除できる
遺言の方式
遺言には、自筆証書、公正証書又は秘密証書という3つの方式があり、これによらなければなりません。
⑴自筆証書遺言は、遺言者が全文、日付及び氏名を自書して印を押す必要があります(民法968条)。
ただし、民法等の改正があり、平成31年1月13日以降は、一部が簡略化されました。
具体的には、相続財産の全部又は一部の目録をパソコンで作成して、添付できるようになりました。
(注)目録の各ページには署名押印が必要です。
【出典~法務省のホームページ】
なお、自筆証書遺言は、開封前に家庭裁判所の検認を受ける必要があります。
⑵公正証書遺言は、証人2人以上の立合いのもと、公証人が作成します(民法969条)。
公正証書遺言では、公証人の費用が掛かりますが、家庭裁判所の検認を必要としない点でお勧めです。
⑶秘密証書遺言は、遺言者が遺言に署名押印した上で封じ、同じ印で封印する(民法970条)。
さらに、公証人と証人2人以上の前に封書を提出し、公証人とともに署名押印する。
なお、秘密証書遺言は、自筆証書遺言と同様に家庭裁判所の検認を受ける必要があります。
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まとめ
このブログでは、遺言の作成がお勧めな理由を取り上げました。
ご主人の参考になると嬉しいです。
なお、お困りのことがありましたら、お気軽に問い合わせてください。
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