前回は、居住用財産とは何か?について詳しく書きました。
そして今回は、7種類の居住用の各種特例を詳しく書きます。
自宅を売ったら3,000万円の特別控除。
多くの場合はこれで解決しますが、
- 3,000万円控除しても利益が残って課税されたり
- 国民健康保険税が高くなったり
- 所得税や住民税の基礎控除や配偶者控除が受けられなくなったり
と、他の特例を受ける方が有利なケースがあります。
※国民健康保険料(税)
市町村によって国民健康保険料のところと国民健康保険税のところがあります。
料のところは、3,000万円控除の後で計算しますが、税のところは3,000万円控除の前で計算します。
すると保険税は最高額の102万円になる場合があるのです。
そこで、3,000万円控除ではなくて買換え特例を使う。
自宅を売って新たに自宅を買った場合、買換えの特例を使うと、売却金額と買換え金額の差額で計算することとなり、国民健康保険税を安く抑えることができる場合があります。
※所得税・住民税の基礎控除や配偶者控除
所得税や住民税を計算する際に、所得から控除して課税対象額を減らせる。
つまり、基礎控除や配偶者控除を受けると、所得税や住民税が安くなります。
しかし、基礎控除は合計所得金額が2,500万円を超えゼロになります。
また、同様に配偶者控除は1,000万円を超えると受けられなくなります。
この場合の合計所得金額は、居住用の3,000万円の特別控除の前で計算します。
この場合も、買換えの特例を使うことで節税できる場合があります。
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居住用の各種特例とは
居住用の特例は、次の7種類あります。
- 軽減税率
- 3,000万円の特別控除
- 空家の3,000万円の特別控除
- 買換えの特例
- 交換の特例
- 買換等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
- 特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
軽減税率
この特例は、所得税と住民税の税率が下がるものです。
譲渡所得の税率は、長期の場合、所得税と住民税合わせて、20.315%です。
そして、軽減される税率は6,000万円以下の部分が14.21%になります。
この特例は、3,000万円の特別控除と併せて適用できます。
したがって、3,000万円の特別控除後の金額のうち、6,000万円以下の部分の税率が、
20.315%から14.21%へ▲6.105%下がるというものです。
ちなみに、6,000万円を超える部分は20.315%で同じです。
★追加される条件
居住用の3,000万円の特別控除の適用条件に、追加されるものがあります。
居住用財産の範囲は3,000万円の特別控除と同じで、
- 家屋と敷地の所有期間が1月1日で10年を超えること
- 日本国内にあること
3,000万円の特別控除の適用条件は、次のブログをご覧ください。
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3,000万円の特別控除
居住用の特例の中で、最も適用件数の多い特例が3,000万円の特別控除です。
この特例は、住んでいる家やその敷地を他人に売った場合の特例です。
詳しい条件などは次のブログをご覧ください。
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空家の3,000万円の特別控除
この特例は、1人暮らしの人が亡くなって、相続した空家を売ったケース。
急激に増えた空家を減らし、地震によって空家の倒壊を防止する新しい制度で、平成28年4月1日の譲渡から、3,000万円を控除できます。
【適用条件】
他の居住用の特例とは異質なもので、適用条件は以下のとおりです。
- 相続人又は包括受遺者(死因贈与を含む)が売却し
- 被相続人の居住用家屋と敷地の両方を取得した人で
- 敷地は売却時まで事業や貸付されず空家の敷地だったこと
- 家屋の全部を取壊した場合は事業や貸付されていない空地
- 売却金額は前後の売却を含め1億円以下
- 相続税の取得費加算の特例とは選択適用
- 同じ被相続人につき1回だけ
- 相続開始から3年目の年末までの売却
- 同じ年に自己の居住用特例を受ける場合は合計で3,000万円まで
- 買主は配偶者、直系血族や同族会社などではないこと
- 確定申告で特例適用を受けること
- 固定資産の交換の特例や収用の特例などを受けないこと
被相続人の居住用家屋とは、次のすべてに該当するもの。
- 被相続人の生活の本拠
- 1人暮らししていた母屋のみ
- マンションなどの区分登記以外
- 要介護認定等を受け老人ホームに入居していた場合、直前まで1人暮らしの家屋を含む
- 昭和56年5月31日以前建築の家屋
- 売却時に耐震基準に該当しているもの
- 相続から売却時まで、事業や貸付されず空家であったこと
- 相続後の増改築、修繕、模様替えされたものを含む
買換えの特例
住んでいる家屋を売却して新たに住まいを買入れた場合、買入金額までの収入を無かったことにできる特例です。
例えば、住まいを5,000万円で売却し、新たに5,000万円の住まいを買入れたケースでは、売却による譲渡所得は無かったことになります。
この結果、国民健康保険税が増えません。
さらに、所得税や住民税の基礎控除、配偶者控除に影響がでません。
なお、買入れた住まいの取得費は、売却した住まいの取得費を引継ぐことになり、将来売却した際に課税が繰り延べられることになります。
また、買入れた日は実際の買入れ日となるため、5年以内に売却すると短期譲渡所得として所得税と住民税の税率が、合計39.63%と高額になるため注意が必要です。
買換えの特例の条件は、次のとおりです。
- 居住用財産の範囲は3,000万円の特別控除と同じ
- 家屋と敷地の所有期間が1月1日で10年を超えること
- 所有者の居住期間が10年以上であること
- 日本国内にあること
- 譲渡対価が1億円以下であること
- 贈与、交換、出資、代物弁済でないこと
- 居住用財産の軽減税率や3,000万円の特別控除とは選択適用
- 居住用の各種特例は3年に1度しか受けられないこと
- 確定申告で特例適用を受けること
買換え住まいの条件は次のとおりです。
- 日本国内にあること
- 自己の居住用家屋であること
- 自己の居住用床面積が50㎡以上
- 中古住宅は築25年以内又は建築基準等に適合すること
- 居住用家屋の敷地は500㎡以下
- 買入れ期間は前年1月1日~翌年年末まで
- 買入れは、贈与、交換、代物弁済でないこと
- 売却の翌年年末までに住むこと
- 買入れが翌年の場合は翌々年年末までに住むこと
交換の特例
基本的には買換えの特例と同じです。
異なる点は、交換という点です。
交換で渡した住まいと取得した住まいを、ともに、そのときの時価で計算します。
なお、差金がある場合には、差金に対してのみ譲渡所得の課税関係が発生します。
買換等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
住まいを売却して損失が発生した場合で、新たに10年以上のローンを組んで住まいを買換えた場合。
この特例は、損失の金額を給与などの他の所得から控除できます(損益通算といいます)。
さらに、引ききれなかった損失を翌年以後3年間繰り越し、給与などの他の所得から控除できます(繰越控除といいます)。
なお、詳しくは別のブログに書きましたので、ご覧ください。
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譲渡の損失は給与などから引けませんが、居住用なら引ける特例が2つ
特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
住まいを売却して損失が発生した場合で、売却した住まいに売却金額を超える10年以上のローンが残っていた場合。
つまり、住まいを売却してもローンを返済しきれなかったケースです。
この特例は、損失の金額を給与などの他の所得から控除できます(損益通算といいます)。
さらに、引ききれなかった損失を翌年以後3年間繰り越し、給与などの他の所得から控除できます(繰越控除といいます)。
なお、詳しくは別のブログに書きましたので、ご覧ください。
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譲渡所得に詳しい税理士へ
譲渡所得のことはその道のプロ、詳しい税理士に相談しましょう。
譲渡所得はちょっと特殊な税金です。
加えて、本当に詳しい税理士、いわゆるプロの税理士は多くありません。
税理士は、全国に約8万人もいます。
しかし、譲渡所得に詳しい税理士は、実は少ないのが現状です。
このブログでは、居住用の各種特例を取り上げましたが、専門的で注意が必要です。
したがって、予期せぬ税金がかからないように、プロの税理士に相談したり依頼することは絶対です。
なお、プロの税理士に関するブログもあります、参考になると嬉しいです。
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まとめ
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